■標準報酬月額が年1回見直し
定時決定は、事業所に使用されるすべての被保険者について、その年の4、5、6月の3ヵ月間に受けた報酬月額の平均額を届け出て、標準報酬月額の見直しを行うものです。
このため事業主は、毎年7月1日から10日までの間で、各事業所ごとに定められた日までに、年金事務所(または厚生年金基金、健康保険組合)に算定基礎届を提出します。
定時決定による標準報酬月額は、その年の9月1日から翌年8月31日まで(または随時改定や育児休業等終了時改定が行われるまで)適用されます。
■定時決定の対象者
その年の5月31日までに被保険者の資格を取得した人で、7月1日現在の被保険者全員が定時決定の対象になります。休業や海外勤務をしている人や7、8月に退職予定の人でも7月1日現在、事業主と使用関係があれば定時決定の対象になります。
ただし、次に該当する人は対象外です。
(1)その年の6月1日以降に被保険者資格を取得した人
(2)その年の6月30日以前に退職(資格喪失日が7月1日以前)した人
■届出用紙などは事前送付
定時決定に先立ち、年金事務所などから6月中旬頃に事業主に対し、算定基礎届などの届出用紙(またはターンアラウンドFD)が送付されます。算定基礎届には5月初旬時点のデータにより被保険者の氏名、生年月日、従前の標準報酬月額などが印字されています。作成日以降に定時決定に該当しなくなった従業員について確認し、訂正する必要があります。
※年金事務所へは、FDなどの磁気媒体による提出も可能になっています(厚生年金基金や健康保険組合では、受付体制が整って入れは可能)。
■算定基礎届の作成
算定基礎届の作成に当たっては、次のように報酬に含めるものの範囲や、算定の対象月に注意して報酬月額の平均額を算出し記載します。
(1)臨時手当や賞与は報酬に含めない
臨時的な手当や年3回以下で支給される賞与(標準賞与額の対象となる)は報酬に含めません。
(2)現物給与は金銭に換算
4、5、6月に現物給与の支給があるときは、厚生労働大臣の告知額にしたがって金銭に換算し報酬に含めます。
(3)支払基礎日数が17日以上の月が算定対象
4、5、6月の3ヵ月間のうち、支払基礎日数が17日以上の月を対象とし、17日未満の月があるときはその月を除いて報酬月額の平均額を算出します。
(4)遡り昇給があり遡及支払いが生じたとき
4月に昇給額が決定し、その昇給開始月が3月からとなったため、4月の昇給額に3月分の昇給差額を上乗せして支給されることがあります。
この場合は、通常の平均額を算出後に改めて3月分の昇給差額を除いた修正平均額を算出し、標準報酬額を算出することになります。備考欄には遡及支払額と昇給差の月額、昇給月を必ず記入します。
(5)賃金が日割りで支給されたとき
4月の賃金の締切日途中に資格取得したなどで、入社月の賃金が日割計算となっている場合は、支払基礎日数が17日以上あっても平均額が下がってしまいます。このため4月の報酬月額は除いて修正平均を行います。備考欄には資格取得日を記入します。
(6)8、9月の月額変更予定者の取扱い
8、9月の月額変更(随時改定)予定者については、都道府県によって次のように取扱いが異なっています。
・算定基礎届で定時決定として作成する。算定基礎届の備考欄に「8月に月額変更予定」、「9月に月額変更予定」と記入して提出する。
・算定基礎届で定時決定として作成せず、総括表の8、9月の月額変更予定者欄に氏名と被保険者証の番号(厚年整理番号)を記入する。実際に8、9月に月額変更に該当したときに月額変更届を提出し、月額変更届に該当しなかったときは算定基礎届を遡って提出する。
■保険者算定の要件が追加に
標準報酬月額が一般的な算定方法では決定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者(年金事務所、厚生年金基金、健康保険組合)が算定し、その被保険者が9月以降に受けると予想される報酬(修正平均)を決定します。
具体的には、4、5、6月の間に給与の遅配があった、休職した、ストライキによる賃金カットがあった場合などに行われます。
平成23年4月からは、「当年の4、5、6月の3ヵ月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額(通常の定時決定の方法により算出した標準報酬月額)と、前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額(前年の月平均報酬額により算出した標準報酬月額)の間に2等級以上の差を生じた場合であって、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合」についても、保険者算定を行うことができることとされました。
これは、4〜6月に残業代が多く支払われる傾向にあり、この時期に決定された報酬月額により1年間にわたり高い保険料を納め続けなければならないという不均衡を解消する措置です。
この場合、事業主が年金事務所などに、保険者算定の要件に該当すると考えられる理由を記載した「申立書」に、被保険者の同意書および前年7月から当年6月までの被保険者の報酬月額などを記載した書類を添えて提出することになります。
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