社会保険の適用拡大が事業所に及ぼす影響や、短時間労働者の対応などを探るため、独立行政法人労働政策研究・研修機構(厚生労働省所管)は、事業所とそこで雇用される短時間労働者を対象にアンケート調査を実施した。
また、短時間労働者を多く雇用する業種の状況を把握するため、企業と労働組合に対するインタビュー調査も行っている。
アンケート調査は、常用労働者を5人以上雇用する全国の15,000社の事業所を対象にアンケート調査票を郵送し、その事業所で雇用される短時間労働者にアンケート調査票の配布を依頼する方法で行われた。
調査は2012年7月12日から8月31日の間に行われたが、回収された事業所の調査票は3,591件で回収率は23.9%、労働者の調査票は5,317件で回収率は8.5%となっている。
インタビュー調査は、小売業、外食サービス業、宿泊サービス業、介護サービス業、運輸・郵便業の3企業5労組を対象として、訪問聴き取り調査により行われた。
同調査による主な事実発見は、以下のようになっている。
短時間労働者を雇用している事業所と、今後雇用する可能性がある事業所を対象に、社会保険が適用拡大された場合に、短時間労働者の雇用管理を見直すかに対しては、「既に見直した」が3.8%、「今後見直す(と思う)」が53.9%、「特に何もしない(と思う)」が37.3%などとなっている。
国民年金の第1号被保険者、第3号被保険者、国民年金に加入していない短時間労働者を対象に、社会保険の加入を希望するかの問いに対しては、「希望する」が26.5%で、「希望しない」が72.0%となっている。
また、社会保険の適用が拡大された場合、現在の働き方を変更するかの問いには、「変えると思う」が61.8%、「変えることはないと思う」が35.9%などとなった。
「変えると思う」の具体的な内容としては、「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」が26.7%、「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」が15.6%、「適用にならないよう働く時間を減らす」が14.5%、「正社員として働く」が8.7%、「分からない・何とも言えない」が8.0%などとなっている。
「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」あるいは「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」と回答した短時間労働者を対象に、会社から社会保険が適用されないよう労働時間を短くすることを求められた場合の対応については、「現在の会社を辞めて、社会保険の適用対象となることのできる他の会社を探す」が29.6%、「分からない・何とも言えない」が29.3%、「現在の会社で働き続ける」が26.7%、「正社員にしてもらえるよう交渉する」が10.4%などとなっている。
同機構は調査結果から、次のように政策的インプリケーションをまとめている。
「社会保険の適用拡大に伴い短時間労働という働き方は、今後、長時間化する層と短時間化する層の二極化がさらに進むと予測される。長時間化する層は、より高度な業務や責任を任される可能性が指摘されていることから、処遇や労働条件が適切に確保されるか注視していく必要がある。短時間化する層は、より所定労働時間が断片化される分、軽易な業務を任される可能性が考えられ、能力向上の機会不足などに陥らないよう充分注意しなければならない。なお、週20時間未満になることで、雇用保険から外れる短時間労働者が増える可能性がある点にも留意する必要がある。 |