平成25年4月以降に60歳になる昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日生まれの男性から、国の年金の支給開始年齢が61歳に引上げられ、60歳時で年金空白(無年金)期間が生じてしまう。
老齢厚生年金は、かつては60歳から支給されていた。しかし、制度が発足した時代に比べて国民の平均寿命が予想以上に伸びてきたことや、高齢者の年金を支える現役世代の負担が重くなってきたことなどから、制度の改善が求められていた。
このため平成12年改正において、年金給付と保険料負担のバランスが図られるよう、「老齢厚生年金」の受給開始年齢を「老齢基礎年金」と同様に65歳に引き上げることとした。
ただし、激変を緩和するための経過措置として、当分の間は60歳から65歳になるまで「特別支給の老齢厚生年金」を支給し、受給開始年齢が3年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げられている。
「特別支給の老齢厚生年金」は、「定額部分」と「報酬比例部分」から成る。「定額部分」は厚生年金の加入期間に応じて決まる年金で、65歳になると「老齢基礎年金」に切り替わる。「報酬比例部分」は厚生年金保険の加入期間と報酬に応じて決まる年金で、65歳からの「本来の老齢厚生年金」に切り替わる。
受給開始年齢の引き上げのスケジュールは、まず「定額部分」の受給開始年齢の引き上げが、男性は平成13年度から平成25年度にかけて、女性は平成18年度から平成30年度にかけて段階的に行われている。
引き続き「報酬比例部分」の受給開始年齢の引き上げが、男性は平成25年度から平成37年度にかけて、女性は平成30年度から平成42年度にかけて段階的に行われる。
男性は平成37年度に60歳に達する昭和36年4月2日以後生まれ、女性は平成42年度に60歳に達する昭和41年4月2日以後生まれの人は、完全に65歳受給開始となる。
平成25年度以降に60歳に達する人は、60歳台前半で、国の年金がまったく受けられない期間が生じてしまうことになる。
年金空白期間を乗り切る対策として、「繰上げ制度」で受給開始年齢前から年金を受け取ることができる(ただし減額)。繰上げ請求では、以下のような点に注意が必要だ。
@老齢厚生年金と老齢基礎年金を、同時に繰上げ請求しなければならない。
A減額率は生涯変わらず、65歳以降に受ける年金にも適用される。
B一旦繰上げ請求した後に、取り消しはできない。
C繰上げ請求後は、原則として障害基礎年金は受けられない。
D寡婦年金の受給権者が老齢基礎年金を繰上げ請求すると、寡婦年金は失権する。
寿命が延びてセカンドライフの期間が長くなり、年金の生涯減額のリスクは大きい。
日本年金機構は、60歳を迎える人に送付する「年金に関するお知らせ」で、その時点での受給開始年齢や年金見込額を通知しているが、「ねんきんネット」で見込額を確認できる。自身で早期に将来の現実を把握し、繰上げ請求の判断をすることが必要となる。 平成25年4月から「改正高年齢者雇用安定法」が施行されるが、希望する年齢まで働くための健康維持や、仕事面のスキルアップなどの対策を今から心がけておくことも欠かせない。 |