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  適年の廃止期限到来  

 
 適格退職年金は昭和37年に創設され、その後厚生年金基金とともに日本の企業年金制度の2本柱となって発展してきたが、平成14年4月に廃止されることが決まった。
 従業員に対する受給権の保全措置が十分でないなど、年金制度として機能していないことが主な理由である。
 その後10年間は経過措置として存続するが、平成24年3月31日には掛金の全額損金計上や、運用益課税の優遇など措置が無くなるため、他の年金制度への移行か制度終了の対応が求められていた。
 経過措置期間が残り3年となった平成20年6月には、「適格退職年金の円滑な移行の推進に関する連絡会議」が設けられ、アンケート調査や広報の実施など、移行促進策が強化された。
 平成21年1月には、「適格退職年金の企業年金への移行支援本部」が設置され、より効果的な移行促進の支援を行うため、具体的な行動計画が公表された。
 主な取り組みとしては、受託金融機関による個々の事業主に対するコンサルティングや、経済団体による会員企業への広報、実態調査が実施された。また企業年金連合会は、専用のホームページと相談センター・ダイヤルの設置、シンポジウムの開催などを行ってきた。
 一方、適格退職年金の受け皿となるべく、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金が創設されたが、当初は移行がスムーズに進まず、移行する際の手続きの簡素化や、移行先である企業年金制度の改善などの法令整備が行われてきた。
 確定給付企業年金では、審査に係る事務処理を見直して申請書類を減少するなど、事業主の申請手続きの負担軽減や、申請書類の添付順序と整理方法などの明確化が図られた。
 加入者がおらず受給者のみで構成された適格退職年金(閉鎖型適格退職年金)から、確定給付企業年金への移行の更なる促進を目的に、添付書類を省略するなど手続きの簡素化が図られた。
 将来にわたり年金資産が給付のために積み立てておくべき額を下回らず、積立不足が生じない形態で運用されている確定給付企業年金を受託保証型確定給付企業年金とし、次の措置が講じられた。
・事業報告書や決算報告書の記載事項の一部省略を可能とする
・責任準備金および最低積立基準額の計算において、予定利率および予定死亡率の特例を設ける
・事業所の既存の企業年金と、受託保証型確定給付企業年金との併存を可能とする
 また、確定拠出年金においては、企業型確定拠出年金に導入されるマッチング拠出(個人拠出)の掛金の全額を所得控除の対象とした。中途引き出し要件の緩和および加入資格年齢の引上げ後も、現行の確定拠出年金制度に対する税制上の優遇措置が適用される。
 拠出限度額については、企業型で他の企業年金がない場合は5.1万円(改正前4.6万円)、他の企業年金がある場合は2.55万円(同2.3万円)、個人型で企業年金がない場合は2.3万円(同1.8万円)にそれぞれ引き上げるなど、さまざまな移行促進策に取り組んできた。
 適格退職年金の契約件数は、平成14年3月末時点で73,582件だったのが、平成23年12月末現在1,045件と72,537件減少した。また、平成23年9月末時点(3,424件)から3ヵ月間で2,379件減少したことを考慮すると、廃止期限が到来する今年3月末までにはほぼ対応が終了すると思われる。