平成24年には団塊の世代が60歳代後半に達し、就業生活から引退していくと見込まれている一方、日本の高年齢者の就業意欲は非常に高く、65歳以上まで働きたいという者が高齢者の大部分を占めている。
現行の高年齢者雇用安定法では、事業主が定年を65歳まで引き上げる雇用確保措置(平成24年時点で64歳)を義務化しているが、例外的に労使協定により継続雇用制度の対象者の基準を設けて制度を実施した場合は、継続雇用制度を導入したものとみなされる。
雇用確保措置を導入している企業の割合は、31人以上規模の企業のうち95.7%に達しているが、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は47.9%、希望者全員が64歳まで働ける企業の割合は50.8%となっている。
現在、年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられているが、定額部分については、男性が平成25年度(女性は5年遅れ)に65歳までの引上げが完了している。また報酬比例部分は、平成37年度までに65歳まで段階的に引上げられ、無年金・無収入となる高年齢者が生じることが懸念されている。
そのため、生涯現役社会を実現するための環境整備を社会全体で取り組むことが求められている。
また、今後労働力人口が減少していくことから、長期的な視点から高年齢者と若年者の意欲と能力に応じて働ける環境の整備が重要な課題となる。
このような問題意識のもと、7回にわたり対策の検討を進めてきた厚生労働省の雇用対策基本問題部会は、1月6日に「今後の高年齢者雇用対策について」を労働政策審議会に報告した。
その中で同部会は、@希望者全員の65歳までの雇用確保策とA生涯現役社会の実現に向けた環境整備のための方策について、検討結果をとりまとめている。
<希望者全員の65歳までの雇用確保策>
現行の年金制度に基づき公的年金の支給開始年齢が65歳までは引き上げられることを踏まえ、雇用と年金が確実に接続するよう、65歳までは特に定年制の対象となる者について、希望者全員が働くことができるようにするための措置が求められる。
(1)年功的な要素が強い賃金制度や退職金制度、高齢者の人事管理の在り方などの環境整備を検討する
(2)現行の継続雇用制度の対象となる高齢者に係る基準は廃止する
(3)親会社、子会社、関連会社など雇用継続における雇用確保先の対象を拡大する
(4)雇用確保措置実施の指導に従わない企業に対し、企業名の公表等を行う
(5)雇用確保の普及・啓発、相談について、特に経営環境の厳しい中小企業を対象に積極的に支援する
<生涯現役社会の実現に向けた環境の整備>
高齢期は個々の労働者の意欲・体力に個人差があることなどから、それらに応じて正社員以外の働き方や短時間・短日勤務やフレックス勤務を希望する者がいるなど、雇用就業形態や労働時間等のニーズが多様化している。このため、このような高年齢者の多様な雇用・従業ニーズに応じた環境整備を行うことにより雇用・就業機会を確保する必要がある。
また、有期契約労働者を含め離職する労働者に対して、再就職しやすい環境整備が一層必要である。
(1)企業の取組支援など、国としても高齢期を見据えた職業能力開発や健康管理の推進に一層取り組む
(2)定年前の産業雇用安定センターや有料職業紹介事業者を通じた高年齢者の円滑な労働移動の支援を強化する
(3)求職活動支援書やジョブ・カードの作成・交付について、周知・徹底する
(4)高年齢者に配慮した職場環境の整備などに対して支援する
(5)雇用に係る給付など多様な施策の展開が行われるよう環境整備が必要 |