日本年金機構は昨年9月、厚生年金基金(以下「基金」という)の加入記録と国の加入記録が一致していない可能性があるものが260万件にものぼることを公表した。年金記録問題に対する取組の一環として、全国に588件(当時)ある基金が保有する全記録約4,000件と国のデータの突合作業が進められていた中での報道であった。
現在、突合作業が急ピッチて進められているが、その結果、基金の記録と国の記録の内容が不一致となったものの中に、「基金加入の有無に関する記録」が異なることによる事案があることが判明した。
具体的には、基金に係る代行部分が基金と国から二重に給付され、国の給付分が過払いになっている事案(二重給付による過払い)と、基金に係る代行部分が基金、国いずれからも給付されない事案(不支給)で、この対応について検討が行われてきた。
基金加入の有無に関する記録が異なる主な原因としては、旧社会保険事務所において基金加入・脱退時の紙台帳への被保険者種別の記載誤り、または紙台帳記録をコンピュータに転記する際の誤入力と、事業主が基金に対して資格取得届などの必要な届出を行っていないことが考えられている。
国の記録に関しては、すでにオンラインシステムにより、基金加入の有無に関する記録の誤りが生じないよう対応されている。
また、日本年金機構(以下「機構」という)は次のように今後の対応方針案を検討し、適切な措置を講じるとしている。
(1)国の記録が誤りの場合の対応
@二重給付による国給付分の過払い
受給者の場合は、機構が記録を訂正し本人に通知する。事実関係が明らかな事務処理誤りであり、国が給付する過払い分の減額の裁定を行い、過払い分の返納(最大5年分)手続きを行う。被保険者の場合は、機構が記録を訂正し本人に通知する。
A不支給
受給者の場合は、機構が記録を訂正し本人に通知、増額の裁定を行う。被保険者の場合は、記録を訂正し本人に通知する。
(2)基金記録が誤りの場合の対応
基金に対し、基金給付の増額、減額など必要な対応を行うよう指導する。
また機構は、基金の加入状況に関する記録が国と基金で相違する(「基金加入状況記録相違」という。)事案に分類されるものの件数および具体的な事案を把握するため、2回にわたりサンプル調査を実施し、その調査結果を今年10月に公表した。
昨年9月に行われたサンプル調査は、47都道府県事務センターにおいて平成22年9月1日〜24日に基金および企業年金連合会(以下「連合会」という)から記録が不一致であるとして調査依頼を受けたものの中から、基金加入状況記録相違事案に該当するものを全件抽出。
国の記録が「基金非加入」であるにも関わらず、基金または連合会に記録がある事案(代行部分二重給付)と、国の記録が「基金加入」であるにも関わらず、基金または連合会に記録がない事案(代行部分不支給)ごとの件数を調査した。その結果、不一致事案として調査依頼を受けた件数は49,534件であった。
また、今年4月のサンプル調査は、基金加入状況記録相違を補正した場合、年金額に与える影響を把握するために行われた。
仮に国の記録を「基金加入」に訂正した場合に、国の給付が減少する額(年額)、および仮に国の記録が正しい場合に、基金または連合会が支給する代行部分の額(年額)ともに、年金の増減額が1万円以下のものが7割程度を占めるという結果となった。 |