厳しい雇用失業状況が続く中、現在、雇用保険を受給できない人を対象とした「緊急人材支援制度」が時限措置として実施され、無料の職業訓練や訓練中の生活給付を行っている。
平成23年度からは、民主党がマニフェストに掲げた「求職者支援制度」を恒久的制度として創設することとしており、同年の通常国会に関連法案を提出する予定としている。
求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者に対するセーフティネットとして、求職者の就職に必要な職業能力を高めるための訓練を無料で受講する機会を確保するためのもの。また求職者が一定の要件を満たす場合には、その訓練期間中の生活を支援するための給付を支給するなどで、早期就職を支援する制度である。
給付は、対象者が職業能力を高める訓練を受講する期間中の生活を支援するために原則月額10万円を限度に支給され、個人に対する給付と位置付けつつも、世帯の状況を勘案したものとなる。
対象者本人に訓練期間中に一定の収入があれば、その生活を支援する給付を支給する必要性が低いことから、訓練期間中に一定の収入がないことを要件とする。
給付の額は、賃金や生活水準について地域差があり、地域ごとに異なる給付額とすべきという案がある一方、全国一律の給付額とし地域差については貸付によって対応すべきという案もある。
訓練の実施場所によっては交通費負担が重くなり、これが訓練受講の妨げとなることから、生活を支援するための手当に加え、交通費も支給すべきという意見もある。
給付期間は原則1年間とし、資格取得のために1年を超える訓練が必要な場合は、例外的に2年まで認めることとする見込みである。
また、いったん受給すれば、一定期間経過してはじめて再度受給することができるような仕組みが設定される。
対象者については、地域差や家族構成などさまざまに異なり、必要に応じて融資が利用できる仕組みが設けられる。
適正に給付が行われることは、制度が社会的に必要なものとして評価されるために欠かすことができないものであり、このための一定措置が設定される。
偽りその他不正行為により給付を受けた場合は、一定期間給付が受けられないこととするとともに、不正により支給を受けた額の全部または一部の返還を求めるなどのペナルティが科される。
訓練受講者に対する就職支援については、効果的に就職につなげていくためには、訓練開始前、訓練期間中、訓練終了後と、一貫して就職支援が行われることとなり、ハローワークが中心となり、訓練実施機関と密接な連携を図りつつ、より強力な就職支援が行われる。
求職者支援制度は、雇用保険と生活保護の間を埋める制度としての役割が期待されているが、効果的に機能するためには、ハローワークの職員の拡充や専門の訓練コースの増設などの体制作りが不可欠である。
また、長期的に制度を維持するためにも、訓練受講後の就職状況の報告など、給付を受けた人の果たすべき義務を徹底することも重要となる。 |