高齢者医療制度改革会議は、後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度の検討を行うため、平成21年11月以降13回にわたり会議を重ねてきた。
平成22年8月には、それまでの検討結果を、“中間取りまとめ”として公表している。
中間とりまとめは、制度を年齢で区分せず、75歳以上の高齢者も現役世代と同じ国保か被用者保険に加入し、年齢による差別的な扱いを解消することや、多くの高齢者の受け皿となる国保については、第一段階で高齢者に関し都道府県単位の財政運営とし、第二段階で現役世代についても都道府県化を図ることを基本とした、新たな制度の骨格を示した。
平成22年12月に公表された“最終とりまとめ”は、中間とりまとめで積み残しした課題を中心に、新たな制度の具体的なあり方についてまとめている。
<改革の基本的な方向>
かつての老人保健制度は、75歳以上の医療給付費を公費5割と各保険者からの拠出金5割で賄っていたが、@拠出金の中で高齢者と現役世代の保険料が区分されておらず、高齢者と現役世代の負担割合が不明確であったこと、A加入する制度や市区町村により、高齢者の保険料額に大きな差があったことなどの問題点があった。
これを改善するため、現行の後期高齢者医療制度は、国保・被用者保険から分離・区分した独立型の制度とし、高齢者と現役世代の負担割合を明確にする。高齢者一人一人に保険料負担を求め、同じ都道府県で同じ所得であれば同じ保険料とする。
しかし、後期高齢者医療制度は、年齢到達でそれまでの保険制度から分離・区分するという基本的な構造において国民の理解を得ることができなかった。
また、後期高齢者医療制度は、75歳以上の「高齢者間の負担の公平」を図るため、サラリーマンや被扶養者を被用者保険から分離・区分したことから、75歳以上のサラリーマンは傷病手当金を受けられないことになった。また、保険料も全額本人負担となり、その被扶養者も保険料を負担することとなった。
このため、サラリーマンや被扶養者については、75歳を境に保険料や保険給付が異なり、「世代間の不公平」が発生することとなった。
今回の改革では、独立型の高齢者医療制度を廃止し、75歳以上も現役世代と同じ国保か被用者保険に加入することとした上で、(1)公費・現役世代・高齢者の負担割合の明確化、(2)都道府県単位の財政運営といった現行制度の利点はできる限り維持する。
これにより、75歳以上のサラリーマンも傷病手当金を受けることができるようになり、保険料は原則事業主と折半負担になる。被用者保険に移る被扶養者の保険料は、被保険者全体で負担する。
このほかにも、高齢者の保険料の負担率を見直すとともに、各都道府県に財政安定化基金を設置し、高齢者の保険料の伸びを抑制できる仕組みとする。
現役世代と同じ制度に加入することで、患者負担が世帯単位で合算され、高額療養費により世帯当たりの負担額は軽減される。高齢者の健康診査は、各保険者の義務とする。
厚労省の統計によると、増加する医療費に連動した負担増となる将来見通しとなっている。高齢化のさらなる進展が明らかになっている現在、給付と負担の改善が議論される一方で、医療費そのものの抑制策の構築も急がれる。 |