去る4月3日に「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」が開催され、13回にわたる議論の最終とりまとめが行われた。とりまとめでは、社会保険庁改革においてもっとも重要なことは業務改革であると位置づけるとともに、「新人事評価制度」の本格実施や「職員の意識改革」の重要性を指摘している。
また、新組織(日本年金機構)発足に向け、高いレベルで業務を引き継げるよう引き続き、業務改革に最善の努力を尽くすこと強く求めている。
社会保険庁は同日の会議に、「年金記録の管理」についての資料を示した。平成9年1月に実施された基礎年金番号導入後の国民年金と厚生年金の保険料納付について、記録管理の状況を整理したもので、それによると、基礎年金番号に未統合の記録が約5,000万件にものぼることを明らかにしている。また同庁は、本人からの申し出や、裁定請求時および58歳通知等の記録確認の機会を通じて、年金記録の整理・統合に取り組んでいるとしている。
日本の年金制度は、従来、厚生年金保険、共済組合、国民年金に分立していたが、昭和60年改正により、全国民共通の基礎年金を支給するとともに、被用者には厚生年金や共済年金を上乗せ支給する制度に再編された。その後平成9年には、それまで制度ごとに年金番号を付番して加入記録が管理されていたが、各制度共通の基礎年金番号を付番(10ケタの番号で、1人に1番号が付番され生涯変わらない)して加入記録を管理するしくみが導入された。
これにより、制度を通じた記録の把握が容易になり、年金相談や年金裁定時の手続きの効率化や、第3号被保険者の届出モレの解消が図られることになった。
平成9年1月時点の基礎年金番号の付番件数は1億156万件で、その後、転職や結婚等により複数の番号が交付されている人について、平成8年12月以前に加入していた国民年金、厚生年金保険等の年金記号番号を基礎年金番号に統合する作業が計画的に進められてきた。
また、本人に基礎年金番号を通知した際に、複数の年金番号を有する人に申し出てもらった件数が約916万人、および社会保険庁の情報の名寄せ処理(氏名、性別、生年月日の3項目が一致した人の番号の統合)により複数の記号番号を有すると思われる件数が約902万人、計1,818万人に対して平成10年度から照会を行い、平成17年度までに約1,147万人からの回答を受け、記録の統合処理を進めている。
同日の資料によると、平成18年6月現在で基礎年金番号に未統合の記録が約5,000万件あり、これらには基礎年金番号導入前に死亡した人や受給資格期間を満たさないために年金裁定に至らない人(無年金者)など、統合する必要のない番号が含まれているとしている。それら以外の統合する必要がある番号は、(1)年金加入記録のお知らせ(58歳通知)および年金見込額の提供、(2)裁定請求書の事前送付(ターンアラウンド)、(3)社会保険料(国民年金保険料)控除証明書を活用した前年分の年金加入状況の提供、(4)ID・パスワード方式による年金加入状況の提供、(5)ねんきん定期便の送付、など記録確認の機会を拡大することにより適切に管理されていくことになる。
また、平成18年8月から社会保険事務所の窓口に専用窓口を設置するなど「年金記録相談の特別強化体制」を実施しているが、これらの相談時に徹底的な調査・確認に努めていくとしている。